2022/02/19 20:35
こんにちは!
今回は冬に悩まされる、はちみつの「結晶化」についての話です。なぜ結晶化するのか、成分の違いはあるのか、どうやって戻せばいいのかなどをお伝えしていきます!
よく「結晶化しないはちみつは偽物」なんて言われてますが、それは本当でしょうか。そして結晶化したはちみつをちょっと工夫して食べやすくする方法も書いていきますんで楽しんで読んでみてください(`・ω´・)ノ"
なぜはちみつは結晶化するのか

秋に採蜜したはちみつなんて特に、早めに濾過しないと結晶化が進んでなかなか大変なことになっちゃいます。家に置いているはちみつも、寒い時はいざ使おうってときに固まってて出てこないってのはあるあるですよね。
密閉しているはずなのに、なぜはちみつは温度が低くなると結晶化するんでしょうか。しかも中には結晶化しないものもあります。その違いはどこにあるんでしょう?
はちみつが結晶化してしまう単純な答えとして、そもそも糖分が水に対して多すぎっていうのがあります。糖度が80度あることから分かるように、水に対して大量の糖を溶かしたのがはちみつです。そのため何かきっかけがあると、糖は我慢できなくなり結晶化を始めてしまいます。
些細な会話がきっかけで大喧嘩になることってありますよね。
例えが暗いですね、楽しくいきましょう( ´ ▽ ` )ノ
そんなはちみつの結晶化に影響するもの、それは
・グルコースと水分量の割合
・グルコースとフルクトースの割合
・貯蔵温度
主にこの3つが挙げられます。
グルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)とは糖の種類で、この2つが合体するとスクロース(砂糖の主成分)になります。グルコースとフルクトースという分解された糖が存在していることがはちみつの特徴でした(´∀`)
この糖の割合は例えば訪花する花の種類によって変わってくるので、季節や生産地によって「結晶化しやすい」「結晶化しにくい」はちみつがあるわけです。
まずはグルコースとフルクトースの割合について。
基本的にフルクトースは溶解度が高く溶けやすいのに対し、グルコースは水和物となって結晶化しやすいという特徴があります。またフルクトースと比べると溶解度も低いです。
そのためフルクトースを多く含むはちみつの方が結晶化しにくく、時間も長くかかります。例えばアカシアや栗のはちみつはフルクトースの割合が高いので結晶化しにくく、一方で菜の花のはちみつなどはグルコース割合が高いため結晶化しやすくなります。
「グルコースが結晶化している」と単純に置き換えてもいいかもしれません。ちなみにグルコースの色は白なので、結晶化したはちみつは白っぽくなります(`・ω´・)ノ"
僕らのはちみつの場合、ニホンミツバチなので“百花蜜”となります。ですが、季節によって蜜源が違うのでやはり結晶化の度合いが変わってきます。例えばこちらの写真、

左のはちみつは結晶化が起こっているのに対し、右の方は全く結晶化してません。
これ実は、同じ群から採り、同じ温度・場所で保存していたはちみつなんです。ただし左側が秋に採蜜したのに対し、右側は夏に採蜜したもの。もちろんどちらも非加熱。
おそらく夏蜜のほうがフルクトース割合が高く、結晶化しにくいはちみつだったのでしょう。蜜源の違いが目に見えて現れるのも面白いですね~
続いてそんなグルコースの結晶化のスピードに影響を与えるのが「グルコースと水分量の割合」です。
水分が少なくグルコースが多い方が結晶化のスピードが上がります。何となく想像がつきますね、水分が少ない方が溶ける量も減ります。少し語弊がありますが、糖度が高い、甘いはちみつほど結晶化しやすいともいえます。
また当然温度も関わってきます。寒くなると結晶化が始まり、加熱すると溶けるように温度が低いと結晶化しやすいです。だいたい10~15℃くらいの範囲で結晶化が始まるといわれています。また気温差が激しいと結晶化が起こりやすいという意見もありますね。
ミツバチたちは冬になると巣の中で固まって暖をとります。そのためはちみつも結晶化しません。
この3つに加えて、結晶の核となるものが存在するかどうかも実は大事な要因です。これが上で述べた結晶化のきっかけともいえます。
この核があるほうが、当然ですが結晶化しやすくなります。
例えばグルコースの一部がすでに結晶化しており、それが核となる場合がありますし、蜜ろう(巣のかけら)も核となる原因。またある研究では結晶具合と花粉量に正の相関があることが分かっています。つまり花粉もこの核になりうるということ。
これらを中心に結晶化がはじまり、今度はその結晶を核として、、、とどんどん結晶化が進んでいきます。
なので湯せんして溶かすときも、結晶が残らないように溶かし切ることが大事です。
スーパーフードともいわれる花粉、京太のはちみつでは圧搾蜜という花粉多めのはちみつも商品に加えてますが確かにこっちのほうが固まりやすい!
また1段目のはちみつよりも、2段目のはちみつ(つまり花粉層に近いはちみつ)のほうが結晶化しやすいと感じることもあったんですが、やっと疑問が解消した気分です(´∀`)
結晶化による影響
はちみつが結晶化しても、栄養分は変わりません。むしろ加熱する方が栄養は壊れていきます。ただ結晶化すると、上でも書いたように濾過や瓶詰めがやりにくい。なので基本的に結晶化する特性は嫌われがちです。
また実際にデメリットもあります。
上で書いたように、グルコースが結晶化していくので結晶化してない部分のグルコース含量は低下していきます。つまり糖度が下がるわけですね。
糖度が下がると、特に非加熱の天然はちみつではあれが起こります。そう、発酵です。
実際に結晶化したはちみつでは水分活性が大きくなり、発酵しやすくなると言われています。結果として酸味が加わってしまう可能性もあり、好きじゃないって人もいるそう。
ただ個人的には、保管している結晶化したはちみつが発酵した!と感じたことはありません。結晶化するくらいの温度帯では微生物の働きも低下するので、がんがん発酵するぜ!とはならないんだと思います。
また結晶化するとパンなどに塗りやすくなるという特徴もあります。
ということであえて結晶化させたはちみつを商品にしている事例もあります。クリームハニーといわれるものです。

例えば高級品のマヌカハニー。食べたことがない方は画像を見てもらえば分かると思いますが、クリーム状になっている商品が多いです。もちろん採蜜したときはこんな形状ではありません。結晶化する特性を利用して、温度帯などをコントロールすることで結晶体を小さく生成し、クリーム状にしているんです。
こうすると、これ以上結晶化して固まることもなく、パンにも塗りやすいはちみつができあがるわけです。舌触りも特徴的で、そのまま食べてもリッチな気分を味わうことができます。
そんなクリームハニー、実は”らしきもの”なら家で簡単にできちゃいます。使うのは結晶化したはちみつ、泡立て器などかき混ぜる道具。100均にある小型泡立て器なんかがあると、瓶にそのまま入れれるので楽。
これで結晶化したはちみつをかき混ぜると結晶を細かくできるので、、

クリーム状になります!
ここにバターやマーガリンを加えると、簡単にハニーバターができあがります。そのままトーストやホットケーキなどに使ってみましょう。とびます。
サラサラに溶かしたいときはあっためればいいだけですし、使い勝手が良くなります。垂れることもないので料理にもいいし、結晶化したらラッキーと思ってぜひ作ってみてください(´∀`)
結晶化を防ぐには
ではこの結晶化を防ぐにはどんな方法があるんでしょう
よく使われるのはやはり加熱。それも高温で加熱した方が結晶化しにくくなります。なぜなら原因である核を壊せるから。すでに結晶をつくっているグルコースの核を加熱で壊し、ろ過することで蜜ろうや花粉をできる限り除去。加熱するとドロッと感がなくなってサラサラになるので、ろ過の精度も上がります。
その結果、結晶化しにくいはちみつとなるわけです。
ただこの加熱は品質にも影響を与えます。「はちみつの加熱と変化」で書いた通り。
そこで加熱しないやり方はないか、ってことで超音波によって結晶を破壊したり、さらには添加物を加える方法もありますが、ヨーロッパなどでは添加物は規制されているところも。
あとは貯蔵温度を上げる方法。もちろんできるだけ暖かいところに置いたほうが結晶化しにくくなります。ただその温度帯では微生物の活動も活発になるので発酵が起こりやすくなります。加熱処理を行ったはちみつは、発酵の原因となる微生物が死んでしまってるし蒸発で糖度も上がっているので心配いりませんが、非加熱の場合は注意が必要です。
このように、結晶化を防ぐには様々な方法があります。一般的なのは加熱とろ過でしょう。逆にいうと、結晶化するはちみつはこのような処理が行われていない可能性も高いといえます。
ただ、あくまで「可能性が高い」だけです。
上で書いたように、結晶化の要因には例えばグルコースとフルクトースの割合が関わってますし、加熱したから絶対結晶化しないなんてことは無いです。
もっといえばフルクトースが多いはちみつは結晶化しにくいので、非加熱であっても結晶しないはちみつがあるかもしれません。
つまり、「結晶化」は「はちみつが生かどうか」「加熱処理されているか否か」の絶対的な基準にはできないと思います。結晶化したはちみつを見たら、とりあえず「グルコースが多いんだな~」って思っときましょう(-∀-)
そして結晶化したらぜひ”クリームハニー”を作ってみてください!
ということで今回の「結晶化」についての話はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました~( ´ ▽ ` )ノ
*Reshma Krishnan. Honey crystallization: Mechanism, evaluation and
application. 2021. The Pharma Innovation Journal10(5). pp.222-231.