はちみつの加熱と変化 | 京太のはちみつ

2021/10/17 16:07


今回ははちみつの加熱についてです。

京太のはちみつでは、採蜜量の少なさから幻のはちみつともいわれている二ホンミツバチの百花蜜を、非加熱で販売しています。
この“非加熱”というのをわざわざアピールしている理由もここにあります(´∀`)

そもそも市販のはちみつのうち、非加熱のものはほとんどありません。一説には99%が加熱はちみつと言われてますが、ようはそれくらい加熱はちみつが主流だということです。
ちなみに国産でも加熱してるはちみつはたくさんあります。ラベルには表記されてないことが多いので、“非加熱”と書いてなかったらおそらく加熱はちみつだと思います。

でははちみつを加熱するのはなぜなんでしょう?
そして京太のはちみつではなぜ“非加熱”で販売しているんでしょう?

このあたりの疑問に答えていきたいと思います(`・ω´・)ノ"


はちみつを加熱するメリット





はちみつを加熱する目的、それはシンプルに効率を上げるためです。加熱により

・糖度があがる
・さらっとして濾しやすく、瓶詰めしやすくなる

というメリットがでてきます。
このメリット、大規模生産にとっては非常に嬉しい。なぜなら加熱することで糖度を上げると、巣箱の違いによるばらつきも抑えられますし、何より糖度が上がり切ってなくても採蜜することができます。


実は、はちみつって糖度が低いと発酵が始まってしまうんですね。79度未満だとアルコール発酵が始まり、知らぬ間にお酒が出来上がってしまうわけです。もちろん発酵したはちみつもおいしいんですが、発生するガスによる容器の破損にもつながりますし、販売する際には糖度を80度くらいまで上げたいところ。

でも、採蜜が早すぎるとはちみつが十分に乾燥してなくて、糖度が低いことがあります。その場合、はちみつを乾燥させつつ保存すると糖度はゆっくり上がっていきますが、大規模生産ではそんなことしてられないので、加熱して一気に水分を飛ばして糖度を上げてしまいます。
これによりどの巣箱からとったはちみつも同じ糖度で、かつ採蜜頻度も高めることができます。


またこれは皆さんも経験があると思いますが、はちみつは冷えると固まりやすく、温めるとさらっとしてきます。同じように、加熱することでさらさらしたはちみつは扱いやすく、短時間で細かいフィルターで濾す&瓶詰めが可能になります。
実際に僕らは非加熱でろ過、瓶詰めをしていますが、フィルターの目が細かすぎるとはちみつは落ちませんし、時間もかかります。そのためフィルターの目を少し粗目にする必要があり、花粉やその殻などを完璧には取り除けません(花粉の殻は黒くて小さい球体です。害はありません)
大規模で養蜂をしていると時短は大事ですし、加熱が役立つってことです。


しかし、加熱はいいことだけではありません。
というか、はちみつを味わうなら一度は非加熱のものを食べてみるべきです( ゚∀゚)
ということで次は加熱ではちみつから消えていくものについて見ていきましょう!


加熱によって失われるもの



まず一番に伝えたいのは“香り”です。

非加熱はちみつを一度食べればすぐにわかりますが、加熱はちみつとは全くの別物、別の味がします。しかし、主成分はフルクトースとグルコースという2つの糖質であり、これは変わっていません。

ただし大きく違うものが1つ。

それが香りです。

はちみつの香り成分はほとんどが花の花粉由来であることが知られています。実際に砂糖水を給餌して作られたはちみつには、新たに追加された香り成分はなかったという実験結果もあります*¹。

そのはちみつ最大の特徴ともいえる香り、特に二ホンミツバチは様々な種類の花蜜を集めてくるのですごく複雑な香りが味わえるんですが、香り成分というのは揮発性が非常に高いです。そのため加熱するとバンバン飛んでいきます( ^ω^ )


かつ、加熱によっていわゆる香ばしさが加わり本来の香りもマスクされてしまいます。これは加熱で増加するHMF(ヒドロキシメチルフルフラール)という物質が関係しています。カルメラと考えてくれればいいです。香りと同時に、色も褐色へと変化していきます。ちなみにこのHMFははちみつを過度に加熱していないかを検査する指標ともなってます。

この物質は糖の熱分解で生成されるわけですが、この香りが追加されるってなんか勿体ないですよね。「レンゲ」「アカシア」あるいは「百花蜜」としての香りがあるのに、加熱によってどのはちみつにも、”花由来ではない香り”が付加されてしまうわけです。



そしてもう1つ、加熱によって実ははちみつの成分も変化していくことも知ってほしいポイントです。

砂糖と違って、はちみつはビタミンB群を主とするビタミンやカリウムなどミネラル類といった栄養素を含んでます。これこそはちみつが健康食品といわれている理由で、150種類もの栄養素が含まれているという情報もあるほど。


しかし、このビタミンB群、また前回の記事で書いたように生成過程で発生するオリゴ糖などは熱に弱いんです(;д;)
例えば葉酸は5分間の煮沸で食品中の20%~70%が破壊され*² 、またビタミンB1やB2も加熱調理による損失が確認されています*³。
つまり加熱すると、はちみつが含んでいる様々な栄養素、その量がだんだん減っていってしまいます。また非加熱状態では含まれていた酵素にも、熱によって失活するものがあります。「健康にいい」とおもって食べてても実は…なんてことになるわけです。


そして
もちろん糖度が上がるので甘くなりますが、甘さの質が変わってしまいます。これは非加熱はちみつを食べるとすぐ実感できます。すっきりで上品なはちみつの甘さは加熱で失われてしまうわけです。



というわけで、はちみつは加熱によって“香り”や“栄養”を手放してしまいます。市販ではそんな加熱はちみつがほとんどなんです。
もちろん加熱によって効率よくはちみつを生産でき、供給できているのは間違いないです。ただ、はちみつ本来の味と香りを楽しめるし栄養もとれる、そんな非加熱はちみつをぜひ食べてみてほしい。
そして京太のはちみつでは、学生運営だからこそ効率を重視せず(´∀`)、かつ非常に採蜜量が少ない二ホンミツバチのはちみつを非加熱で販売しています。
これは試してみるしかないですね~(-∀-)

*1 市村真納. 2020. 料理に役立つ香りと食材の組み立て方. 誠文堂新光社. p111. 
*2 田口博国ほか. 1973. 食品中の葉酸の加熱調理による損失. ビタミン. No.47.pp21-25.
*3 小島彩子ほか. 2017. 食品中のビタミンの調理損耗に関するレビュー. ビタミン. No.91. pp87-112.